転がりにおける摩擦力の方向

質量 M 、半径 a の密度一様な円筒が、上部において力 F で引かれて転がる運動を考察する。注目すべきは摩擦力の方向である。

摩擦力を F と逆向きに f とすると、重心の運動方程式

M\dot{v} = F - f

重心まわりの回転の運動方程式

\displaystyle\frac{1}{2}Ma^2 \dot{\omega} = Fa + fa

すべることなく転がるとすると、\dot{v} = a\dot{\omega} を考慮して f を消去すれば、

\displaystyle\frac{3}{2}M\dot{v} = 2F

より加速度を得る。問題は摩擦力 f である。2つの運動方程式より、

\displaystyle\frac{1}{2} (F - f) = F + f

したがって、

f = - \displaystyle\frac{1}{3} F

となる。つまり、摩擦力は進行方向となるのである。摩擦が少なくなると、先に回転が起こってすべる、ということにほかならない。

ちなみに、中心を力 F で引くと、今度は

f = \displaystyle\frac{1}{3} F

となり、これは当然ながら(回転方向のモーメントがなければならないから)進行逆方向となる。