運動座標系への座標変換や,速度・加速度の記述について,線素および基底ベクトルを基本情報としてシステマティックに導出する手順を整理してみたい。
2次元極座標
目的とするところがよく見えるように,まず簡単な平面極座標について考えよう。デカルト座標および,極座標によるベクトルの表現をそれぞれの座標系の基底(単位ベクトル)を用いて,
と書く。平面極座標は,座標変数をとすることも多いが,3次元極座標との関連を考えると方位角はを用いるのがよいと思う。
さて,まずベクトルの成分との間の変換だが,
であるから,
と書ける。基底どうしの内積すなわち座標軸どうしの方向余弦を成分として,変換行列を書き下ろせばよい。しかし,この作業はさほど難しくはないがやや煩雑である。そこで,ベクトル成分の変換は,微小変位の変換に等しいことから,座標変換の微分をとってベクトル成分の変換を導出するのが簡便である。
座標変換
の微分をとると,
すなわち,
となるが,極座標の線素により
と書けるから,微小変位の極座標成分は,
である。したがって,ベクトル成分の変換は
となる。逆変換は,転置行列となるから
である。デカルト座標と極座標との間の変換は,座標系の回転に他ならない。
次に速度,加速度を導出する。運動座標系では,基底(単位ベクトル)そのものが変化するから,その微小変化を考えるのが簡明である。方位角の微小変位 にともなう基底の変化は,
であるから,基底の時間変化率は
となる。
なお,デカルト座標の基底にいったんもどして直接微分してもよい。基底の変換は,
これを微分して,
を得る。
であるから,速度は
したがって,加速度は
となる。
運動座標系のシステマティックな導出(2) - 科学のおもちゃ箱@Hatena
(初稿:2010/04/17)