極座標によるスカラー場やベクトル場の微分演算(勾配・発散・回転等)の導出方法はいろいろあるが,いずれもなかなか骨の折れるシロモノ。運動座標系における「回転」を用いる方法を思いついた。
まず,「運動座標系のシステマティックな導出(3)」からのやや長い引用。
「運動座標系による運動方程式(1)」で論じたように,運動座標系におけるベクトルの時間微分は,
と書ける。ここで,
は,を基底とする運動座標系における成分値のみの時間変化率を表し,また
は基底自体の回転による「補正」を意味する。
さて,これを「運動座標系のシステマティックな導出(2)」の3次元極座標系の場合に適用してみよう。
3次元極座標系の微小回転角をとすると,となる。したがって,運動による座標系の回転の角速度ベクトルは,
と書ける。
さて,最初に与えたベクトルの時間微分の表式において,「分母」のを除いた全微分形式を考える。
この微分形式を時間微分のみに限定するのはもったいない。座標微分にも使ってしまおうという魂胆である。
そこで,準備として微分演算子から「分子」の をはずしたモノを考え, と書くことにする。をひっくり返したにならってをひっくり返したかったが,wiki版Texにその機能がみつからないので,の意味を込めて とした。おそらく同義の定義および表記法はどこかで確立されているだろうが,私は知らないので自前で調達したというわけだ。
たとえばベクトル場 の発散は,
と書けることになる。がの方に引っ越したわけだ。
であるから,形式的に
となる。こうして微分形式になりかわったに,
を用いればよいことになる。
以上を とともに代入して整理すると,
あるいは,お好みであれば
を得る。以上の計算で,として,
ただし,
を用いた。
極座標による微分導出への回転の活用(2)
極座標による微分導出への回転の活用(2) - 科学のおもちゃ箱@Hatena
へ続く
(初稿:2010/10/13)