自然長でばねから離れる物体

鉛直ばねについたトレーに載せた物体は,必ずばねの自然長位置でトレーを離れる。

下端が床に固定され,上端に質量Mの板がつけられたばねが鉛直に立っている。板の上に質量mの物体を載せた状態でばねを押し縮めて放したとき,物体は必ずばねの自然長位置で板を離れることになる。


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自然長位置を原点に上向きにx軸をとる。物体および板が離れていないときの加速度をa,物体と板が押し合う抗力をN,ばね定数をkとおくと,物体と板の運動方程式は,

ma = N - mg

Ma = -kx - N - Mg

2式より,

N = -\displaystyle\frac{mk}{M+m}x

したがって,自然長位置x=0において抗力はゼロとなり,物体は板から離れることになる。

この事実を偶然だと思ってはいけない。鉛直ばねによって振動する物体の加速度は,自然長位置において-gとなる。自然長位置では弾性力がゼロとなるから,物体(+板)が受ける力は重力のみになるからである。その後物体は,重力のみによって加速度-gの鉛直投げ上げ運動に移り,板は下向きに重力に加えて復元力を受けるようになるから,下向き加速度の絶対値は,gより大きくなるので,物体と板は離れる方向に相対加速度を持つようになる。

以上のような事情から,運動方程式を立てるまでもなく,物体は必ず自然長位置で板から離れるのである。もちろん,自然長位置まで上がらないような小さな振幅での振動では,物体は板から離れることなく,一体となって振動を続けることになるのはいうまでもない。

天井からつりさげられた鉛直ばねにつけられたトレーに物体が載せられている場合も,全く同じである。
(初稿:2011/06/05)