潮汐力の大きさ

月や太陽による潮汐力が地上の重力に対してどの程度の影響を及ぼすのか,計算してみた。


 月または太陽の質量M,距離R,地球質量m,地球半径rとして,潮汐力の重力に対する比は,

\gamma \equiv \frac{\,\,\,\displaystyle\frac{2GMr}{R^3}\,\,\,}{\displaystyle\frac{Gm}{r^2}} = \displaystyle\frac{2M}{m}\left(\frac{r}{R}\right)^3

となる。

月の場合,M/m=0.0123r/R=0.0166 だから,\gamma=1.1\times 10^{-7} 。

太陽の場合,M/m=3.33\times 10^5r/R=4.25\times 10^{-5} だから,\gamma=0.51\times 10^{-7}

月と太陽とで視直径がほぼ同じという偶然もおもしろいが,潮汐力もほぼ同じオーダーであるのが,偶然とはいえおもしろいところだ。
 いずれにせよ,月および太陽の潮汐力は両方を合わせても最大で重力の一千万分の一の程度である。そこで,地上で一千万分の一の重力差が生じる標高差を計算してみた。高さゼロの重力と高さhの重力の比は,

\left(\displaystyle\frac{r+h}{r}\right)^2 \simeq 1+\displaystyle\frac{2h}{r}
\displaystyle\frac{2h}{r}=10^{-7}
より, h=10^{-7}r/2 \simeq 0.3[m]

すなわち,階段3段も上れば大潮のときの最大潮汐力を感ずることができるというわけである。潮汐力は,出産その他の生理現象に影響するなどという理屈が通る余地のない小ささなのだ。この微小な潮汐力が,地球的規模になると海水面の盛り上がりを生じさせるに足るものになるのはおもしろい。ただし,満潮による海水面の平均上昇は地球の半径に比べてやはり一千万分の一程度になる。
(初稿:2008/12/04)