安定平衡を解く3つの考え方

【問題】 長さa の軽い棒が4本回転軸で連結され、上下の回転軸に q>0 、左右の回転軸に Q>0電荷が固定されている。棒と電荷はなめらかな水平面上を自由に動くことができるとする。安定な平衡にあるときの角 \theta を求めよ。
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(1) 位置エネルギーの極小点を求める

系の位置エネルギー変化に寄与するのは、q どうし、Qうしの位置関係による分だけであるから、
U(\theta) = \displaystyle\frac{k_0q^2}{2a \sin\theta} + \frac{k_0Q^2}{2a \cos\theta}
\theta微分して
\displaystyle\frac{dU}{d\theta} = \frac{k_0}{2a} \left(\frac{Q^2\sin\theta}{\cos^2\theta} - \frac{q^2\cos\theta}{\sin^2\theta}\right)
これを 0 とする \theta において、
Q^2\sin^3\theta - q^2\cos^3\theta = 0
すなわち、
\tan\theta = \displaystyle\left(\frac{q}{Q}\right)^{\frac{2}{3}}
を得る。これが U(\theta) の極小点を与えることは明らかである。

(2) 仮想仕事の原理を使う

\theta に対して無限小仮想変位 \it{\Delta}\theta を考える。
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仮想仕事の原理より、
\displaystyle\frac{k_0q^2}{(2a\sin\theta)^2}\Big\{a\sin(\theta+{\it{\Delta}} \theta) - a\sin\theta\Big\} - \frac{k_0Q^2}{(2a\cos\theta)^2}\Big\{a\cos\theta - a\cos(\theta+{\it{\Delta}} \theta)\Big\} = 0
整理すると、
\displaystyle\left(\frac{q^2\cos\theta}{\sin^2\theta} - \frac{Q^2\sin\theta}{\cos^2\theta}\right){\it\Delta}\theta = 0
すなわち、
\tan\theta = \displaystyle\left(\frac{q}{Q}\right)^{\frac{2}{3}}
を得る。

(3) 力のつりあいを使う

棒1本に着目して、力のモーメントのつりあいを考える。受ける力は、q どうし、Qうしの反発によって生じる力と、他の2本の棒から受ける張力である。この2つの張力は、大きさが等しく平行だから、棒の中点を軸とする力のモーメントが打ち消しあう。したがって、棒の中点を軸とする力のモーメントのつりあいは、
\displaystyle\frac{k_0q^2}{(2a\sin\theta)^2}\cdot\frac{a}{2}\cos\theta = \frac{k_0Q^2}{(2a\cos\theta)^2}\cdot\frac{a}{2}\sin\theta
すなわち、
\tan\theta = \displaystyle\left(\frac{q}{Q}\right)^{\frac{2}{3}}
を得る。

こうして3つの方法を比べてみると、考え方は異なるが、数学的には全く同じであることにあらためて気づく。(1)で位置エネルギーの角変位に対する微分をとったが、これは力のモーメントに他ならないこと。また、「てこの原理」が「仕事の原理」と同値であることと同じように、力のモーメントのつりあいが「仮想仕事の原理」と同値であることに注目したい。

Algodoo によるシミュレーション(Q:q=2:1
空気抵抗を大きく設定して、減衰振動をさせて平衡位置を確保。
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