棒がたおれる速さ

鉛直に立てた棒が,下端を軸として倒れる場合と,下端が摩擦なくすべって倒れる場合の比較。
>http://okwave.jp/qa4660043.html

【問題】

はじめ鉛直に立っていた長さ L の一様な棒が静かに倒れ始めるとする。水平面とのなす角が \theta となるときの棒の角速度はどれだけか。次の2つの場合について求めよ。
(1) 下端を固定軸として倒れる場合
(2) 下端が摩擦なくすべって倒れる場合

【解答】

(1)
棒の質量を m とするとエネルギー保存により,

mg\displaystyle\frac{L}{2} = \frac{1}{2}m\left(\frac{L}{2}\dot{\theta}\right)^2+\frac{1}{2}\cdot\frac{1}{12}mL^2\dot{\theta}^2+mg\frac{L}{2}\sin\theta \qquad\\ \left(=\displaystyle\frac{1}{2}\cdot\frac{1}{3}mL^2\dot{\theta}^2+mg\frac{L}{2}\sin\theta \right)
したがって,
\dot{\theta} = -\sqrt{\displaystyle\frac{3g(1-\sin\theta)}{L}}

(2)
重心の速度が鉛直方向であることを考慮して,エネルギー保存により,

mg\displaystyle\frac{L}{2} = \frac{1}{2}m\left(\frac{L}{2}\dot{\theta}\cos\theta\right)^2+\frac{1}{2}\cdot\frac{1}{12}mL^2\dot{\theta}^2+mg\frac{L}{2}\sin\theta
したがって,
\dot{\theta} = -2\sqrt{\displaystyle\frac{3g(1-\sin\theta)}{L(1+3\cos^2\theta)}}
2つの運動についてさらに考察してみよう。同じ角度で計算してみると,重心運動のエネルギーは(2)が小さくなる(注:求めた角速度を代入せよ!)。すると,(2)の場合はより多くのエネルギーが重心まわりの回転に費やされていることになる。したがって,最終角速度はいずれも同じだが,倒れる時間は(2)の方が短いと推測される。実際これは,(2)の角速度の方が倒れる途中では常に大きいことからもすぐにわかることである。mの棒を角度60°から倒す理論計算では,
(1)
T = -\sqrt{\displaystyle\frac{L}{3g}}\displaystyle\int_{\pi/3}^0\frac{d\theta}{\sqrt{\sqrt3/2-\sin\theta}} \simeq 0.481 sec.
1mものさしで実験してみた。実験値 0.51 sec.
(2)
T = -\displaystyle\frac{1}{2}\sqrt{\frac{L}{3g}}\int_{\pi/3}^0\sqrt{\frac{1+3\cos^2\theta}{\sqrt3/2-\sin\theta}}d\theta \simeq 0.385 sec.
となる。
1mものさしに滑車をつけて実験してみた。実験値 0.45 sec.
初期条件を鉛直にとってはいけない。たおれる時間は当然ながら無限大になってしまう。
ちなみに,0.5m×√3/2=0.433mからの質点の自由落下時間は,0.297 sec.である。

(初稿:2009/01/27)