回転系から見た等速直線運動

回転円板の上で見た等速直線運動を解析する。http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1050881080より。


一定の角速度 \omega で中心軸周りに回転する円板があり,質点が慣性系から見て摩擦なくまっすぐすべって円板を横切るとする。円板とともに回転する座標系で質点の運動を記述したい。

まず,回転系でなく慣性系に静止した平面極座標 (r,\theta) で記述することを考える。
運動方程式は,

m(\ddot{r} - r\dot{\theta}^2) = 0
\displaystyle\frac{m}{r}\frac{d}{dt}(r^2\dot{\theta}) = 0

すなわち,

\ddot{r} = r\dot{\theta}^2
r^2\dot{\theta} = h (一定)

第2式(角運動量保存)により,\dot{\theta} = h/r^2
これを第1式に代入してr に関する微分方程式を得るが,エネルギー保存を使う方が見通しがいいだろう。

\displaystyle\frac{1}{2}m(\dot{r}^2 + r^2\dot{\theta}^2) = E (一定)

角運動量保存を適用し,\dot{r} について解くと,

\dot{r} = \pm h\sqrt{\displaystyle\frac{1}{{r_0}^2}-\frac{1}{r^2}}\quad , \quad {r_0}^2 = \displaystyle\frac{mh^2}{2E}

を得る。もちろん,動径方向の運動方程式をエネルギー積分すれば同じものを得る。r_0 は許される r の最小値を示す。r=r_0\cos u とおくと積分できて,

\displaystyle\frac{{r_0}^2}{h}\tan u + C = t

となる。複号は\tan u に吸収された。積分定数は時間原点を変えることに相当するから,C=0 として r に書き戻せば,

r(t) = \sqrt{{r_0}^2 + v^2t^2 }  …(1)

を得る。ただし,一定の速さを v として h=r_0v を用いた。時間原点は, r=r_0 になるときである。

\tan u = \displaystyle\frac{vt}{r_0}

となるので,u は原点に最も近づいたときの動径と時刻 t のときの動径との角度であるから,r=r_0 のときの方位角を \alpha とすれば,

u = \theta - \alpha

となる。すなわち,

r(\theta) = \displaystyle\frac{r_0}{\cos(\theta-\alpha)}

として,これ自体が軌跡の方程式(直線)を表し,同時に

\theta(t) = \alpha + \tan^{-1}\displaystyle\frac{vt}{r_0}  …(2)

を得る。(1),(2)が運動方程式の解ということになる。

ずいぶん冗長な計算をしたが,ここまでで等速直線運動の極座標形式を求めたわけだ。いよいよ,回転系(加速系)に移ろう。実はこれは簡単なことで,回転系の極座標(r,\phi) で表せば,

\phi = \theta - \omega t

とするだけでよい。すなわち,

\phi(t) = \alpha + \tan^{-1}\displaystyle\frac{vt}{r_0} - \omega t   …(3)

を得る。(1)と(3)が回転系の極座標による質点の運動を与える。下図は,適当な初期条件で得られた軌跡である。
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(初稿:2018/10/19)