地球表面は宇宙空間に対する地球自身の運動のために、非慣性系となっている。地球は太陽の重力のままに自由運動していることを考えれば、宇宙船地球号の内部は太陽の重力に対しては「無重量状態」にある。つまり、簡単にいうと公転による遠心力と太陽重力とがつりあっていて、宇宙船地球号の内部の運動には太陽重力は直接に関与しない。わずかながら「潮汐力」が関与するのみである。したがって、非慣性系の主たる要因は地球自転である。
ある問題への予習として、地表座標系における運動方程式についてまとめておきたい。
その基本は、
運動座標系による運動方程式(1) - 科学のおもちゃ箱@Hatena
運動座標系による運動方程式(2) - 科学のおもちゃ箱@Hatena
で触れた「運動座標系による運動方程式」にある。
質点の位置ベクトルをS系(慣性系)で,S'系(非慣性系)で と書く。ある瞬間に,S'系の原点がS系から見てにあり,さらにS'系がS系に対して角速度で回転しているとすると,
に対するS'系における運動方程式は
となる。ここに は、S'系におけるベクトルの「素直な」時間微分、すなわち基底の変化を考慮しない「成分のみの時間微分」を指す。したがって、この微分演算子はS'系におけるベクトルにのみ作用する。
右辺第2項は並進加速度による慣性力,第3項はコリオリ力,第4項は遠心力,第5項は角速度の変化(回転の加速,回転軸の移動)による慣性力をそれぞれ意味している。
さて、これを緯度 の地表に固定したS'系に適用する。南方に 軸、東方に 軸、鉛直上方に 軸をとる。S'系は、地球自転とともに地軸に対して角速度 で運動する座標系である。
S系に対するS'系の原点O'の速度は、
同様に加速度は、
となる。したがって、運動方程式右辺第2項は
となる。これは自転による遠心力である。
あれれ、遠心力は運動方程式右辺第4項にすでにあるではないか? 否。こちらこそが自転の遠心力であって、右辺第4項はS'上で原点から離れるために生じる余分なのである。こちらは、 によってむしろ無視できるわけだ。
次にコリオリ力。自転による角速度ベクトルのS'系における成分は
したがって、
となる。ただし、
はS'系における速度ベクトルの「素直な」表現である。
かくして、地表付近の運動方程式は次のように表される。
後々のため遠心力項を書いたが、実際の地表座標系では遠心力は重力に含まれるので、
となる。
【参考】
http://www.th.phys.titech.ac.jp/~muto/lectures/Gmech08/chap13.pdf