猿とおもり問題

そもそもの出典は Monkey and Weight Problem,Lewis Carroll (1893)らしい。定滑車をはさんで質量が等しい猿とおもりがつりあって静止している。猿がロープをよじのぼろうとすると,両者はどのような運動をするか,というもの。

原典の挿絵らしい。下記URLから転載。

【参考URL】
http://www.futilitycloset.com/2006/11/22/a-weighty-problem/
http://activityworkshop.net/puzzlesgames/monkey/index.html
※ 原典は,猿はりんごをかじりながら,ロープにつかまってゆれている…という難問?


ロープと滑車の質量,および滑車の摩擦は無視できるものとする。

猿とおもりは,実際は加速度が刻々と変化する運動をする。
しかし,両者の加速度が等しいことを理解すれば答えは明らかである。
張力の原理から,質量が無視できるロープの両端の張力 T は等しい。
したがって,猿とおもりの運動方程式は,質量 m,加速度 a として,いずれも

ma = T - mg

となる。猿とおもりはまったく同じ運動をして,ともに上方へ上っていくことになる。

もちろん,この運動は現実には起こりえず,この問題は単純な条件を仮想した力学パズルにすぎない。捨象した条件の効果を検討してみたいところ。

(1) ロープの質量を考慮する
 ロープの質量が無視できないとなると,どうなるか?
(2) 滑車の質量およびロープとの摩擦を考慮する
 滑車の回転の運動方程式も考慮することになろうか?
(3) 猿の振り子運動を考慮する
 …
これは力学の問題としては結構難しそうだ。

【続編】

猿とおもり問題で,ロープの質量を考慮する場合の結論。

(1) ロープの質量を考慮する
 ロープの質量が無視できないとなると,どうなるか?

の結論=猿とおもりの運動の概観だけはわかったように思う。

あらためて上の図のようにおくと,猿・おもり・ロープの t=0 における運動方程式は,

Ma = T - Mg
Ma^\prime = T^\prime - Mg
ma^\prime = T - T^\prime

第2・3式より

(M+m)a^\prime = T - Mg \qquad \therefore a^\prime = \displaystyle\frac{M}{M+m}a

となる。したがって,猿とおもりの初期加速度は同符号であるから,

a>a^\prime>0

である。すると,ロープは猿側にたぐりよせられるわけだから,少なくとも猿がロープを引く力を弱めた時点で,たぐりよせられたロープの余分な重みのため,猿の加速度は下向きに転じて,いずれ降下していくことになると思われる。猿がロープをある(時間とともに増加する)力で引き続けて a\ge 0 を維持することは理論的には可能だが,実際は無理というものである。

ここであらためて気づくことがある。それは,

「猿は,もし上に上がりたかったら,昇ろうとロープを引くのでなく,
 降りようとして引く力をゆるめればよかった。」

ということである。おもりの降下とともにおもり側に移動した分のロープの重みのために,ただちに猿は上昇に転ずるであろう。

Phun(現Algodoo)でシミュレートしてみた。Phunのくさりは連結に質量に連動する弾性があり,ロープの質量ゼロのシミュレーションは不可能である。上の考察とは大分事情が異なるが,結論は同じ?

Phunシーンのダウンロード
https://img.atwikiimg.com/www14.atwiki.jp/yokkun/attach/168/1489/M%26W-2.phz
※ 「猿」の動きは、リターンキーで止まる。

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(初稿:2009/09/17)