スイングバイは,簡単にいえば探査機と惑星との弾性衝突である。Yahoo!知恵袋よりひろった1次元弾性衝突としてのスイングバイの考察を2次元にひろげてみた。
【問題】
図で重力のスイングバイ効果が、(太陽に対して)9.6km/sの軌道速度でx負方向へ運動している惑星、土星に対して示されている。土星の質量は5.69×10 kg、質量825kgの宇宙船は、最初、x正方向に10.4km/sで土星に近づいている。土星の重力による引力(保存力)は、宇宙船をその回りに振り回して(破線によって示された軌道)逆向きにしている。土星の引力から自由になるまでに十分に離れた後での宇宙船の終状態の速度を求めよ。
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https://img.atwiki.jp/yokkun/attach/492/1085/Swing-by.phz
【解答】
この問題は,本質的に1次元弾性衝突の問題であるといえる。
土星は宇宙船に比べて十分に質量が大きいので,速度を変えることはなく で動き続ける壁と考えることができる。また,力学的エネルギー保存が成り立つということは,はね返り係数1の弾性衝突と同等である。したがって,この問題を最も簡単に解く方法は,はね返り係数 の式を立てることである。
を考慮して,
[km/s]
を得る。もちろん,運動量保存とエネルギー保存の連立で解くこともできるが,いずれにせよ土星の質量 が宇宙船の質量 に比べて十分大きいという近似を適用すれば,同じ結果を得る。
とする。
運動量保存
すなわち
…(i)
エネルギー保存
すなわち
…(ii)
(i)(ii)を連立させて, を考慮すると
を得る。
次に弾性衝突としてのスイングバイの考察を2次元に発展させてみよう。
スイングバイ前後の探査機の速さを ,それを土星から見た相対速さを とすると,対称性(エネルギー保存)から である。また,土星の速さを とし,速度ベクトルの関係を図のようにとる。目標は,進入および離脱の方位角 を指定して,最終速さ を求めることとしよう。
同様にスイングバイ後の速度の関係は
上2式より
を得る。Algodooによる,シミュレーションでは
という設定で, を得た。ただし, が無限遠の進入速度ではないので, もしかりである。
ちなみに,進入および離脱の方位角条件は基本的にラザフォード散乱すなわち
衝突パラメータと散乱角 - 科学のおもちゃ箱@Hatena
の問題と同等であり,斥力と引力の違いはあるものの,進入速度とともに衝突パラメータによって決まる。
参考:ラザフォード散乱の軌道 - 科学のおもちゃ箱@Hatena
(初稿:2011/02/07)