数学を道具として使い慣れると,「計算バカ」に陥りますよ・・・という自分への戒め。
【問題】
起電力が一定で内部抵抗が無視できる電源に,図のように電気抵抗 の抵抗およびレールAB,CDをつなぐ。全体紙面上向きに磁場がかかっているとする。右端から抵抗の無視できる導体棒を一定の速さ ですべらせるとき,AP間の電圧 の時間変化を表すグラフとして適するものを選べ。(答えは④)
【解答】
速さ一定だから,導体棒に生じる誘導起電力は一定。それを考慮した回路の全起電力を とする。
時刻 におけるAP部分の抵抗は,レールの長さを として
したがって,時刻 における抵抗Rの電圧降下は,
この時間変化は,右上がりの双曲線。したがってAP間の電圧の時間変化は,右下がりの双曲線④。
これが,「計算バカ」のなせるワザである。実にエレガントではないか!
あらためて仕切りなおし。
【解答】
合成抵抗に対する,AP部分の抵抗の「比の」時間的減少の割合は,導体棒の速さが一定だから,しだいに大きくなる。したがって答えは④。
たとえば,AP間のはじめの電圧は ,中央時刻の電圧は ,終わりの電圧は0。
「計算バカ」の解答は,実はあまり頭を使っていない。理論的計算をマニュアルにしたがってやっただけである。計算力はほめられる(?)かもしれないが,物理力は寂しい限りだ。あえて「数学バカ」とはいわなかった。数学力に富める者は,解答として後者を選ぶからである。
たとえば,
液体モデルと熱量保存問題(その2) - 科学のおもちゃ箱@Hatena
などでも同じ。紹介した図による解説は,比熱と温度変化を追う計算を図でやっただけだから,これを問題を解くのに使うのは「計算バカ」に通ずる。物理力+数学力に富める者は,ひとつ目の湯飲みの内部エネルギーが方法Aの場合に,より多く配分されることでただちに,お茶の最終温度が方法Aの方が低いことを結論するだろう。
(初稿:2009/12/09)