【 問題】
電圧 で電荷 に充電されたコンデンサーをより高い電圧 で追加充電して電荷が になったとする。電池が供給した仕事(電力量) はいくらか。
この問題の解答として,次のうちどれが正しいと思いますか?
(1)
電圧 で電荷 に充電されたコンデンサーのエネルギーは, だから,その差が電池の供給した仕事である。
(2)
電圧 で電荷 に充電するのに必要な仕事(電力量)は, だから,その差が電池の供給した仕事である。
(3)
追加する電荷は, だから,これを電位差 だけ引き上げる仕事を電池が供給する。したがって,
どれも正しいように思えて,迷いませんか? この迷いを解くカギは,コンデンサーを充電する仕事(電池が供給するエネルギー) とコンデンサーに蓄えられるエネルギー の差がどこからくるのかを理解することにあります。
コンデンサーのエネルギー
コンデンサーに蓄えられるエネルギーが であることは,コンデンサーの放電によるエネルギー放出を考えるとわかりやすいと思います。
はじめの電位差は ですが,電荷の流出 とともに電位差 は減少していきます。全放出エネルギーは, の総和(積分)となり,右図の三角形の面積に
相当します。したがって,コンデンサーに蓄えられるエネルギー は,
となります。
定電圧充電とジュール熱損失
次に一定の端子電圧 をもつ電池により,コンデンサを電荷 に充電することを考えます。このとき電池が供給する仕事(電力量) は,電荷 を電位差 だけもちあげるのですから, になります。しかし,コンデンサーに蓄えられるエネルギーは前述のように でしかありません。あと半分のエネルギーはどこにいってしまったのでしょう? 結論からいえば がコンデンサーまで移動するときにジュール熱として失われたのです。
たとえば,充電のはじめにはコンデンサーは電位差 ですから,電荷の移動に要する仕事は であるにもかかわらず,電池は電位差 までもちあげてしまうのです。コンデンサーにおさまるまでに電荷は電位差 をおっこちて外部に仕事をします。真空中では電荷が加速されて運動エネルギーになるわけですが,電流で学習したように導体中ではその分がジュール熱として逃げることになります。
こうしてジュール熱の損失をともないながら電荷がコンデンサーに移動していくと,しだいにコンデンサーの電位差も増加し,電池との落差が小さくなるにしたがって電流も減少していき,コンデンサーが満充電されるころにはジュール熱による損失も に収束するというわけです。
以上の量的な関係は,下図のようになります。
コンデンサーの貯水池モデル
電場を重力場,電位差を高さ,電流を水流にたとえることは理解を助けるよい類推になりますが,その線で行けばコンデンサーは貯水池ということになるでしょうか。このモデルでコンデンサーのエネルギーを考えることは理解の一助となるかもしれません。
下図のように考えると,高さ までもちあげられた電荷(水)はコンデンサー(貯水池)におっこちておちつく過程でエネルギーを失います。満杯になったときコンデンサー(貯水池)に蓄えられた電荷(水)の電場による(重力による)位置エネルギーは半分の高さ (重心)に電荷 (水の質量)を集中させたのと同等になるわけです。
電圧を徐々に上げながら微小な電流で充電すれば,ジュール熱による損失をおさえて電源の供給する仕事を に近づけることができます。
以上のことが納得できれば,最初の問題は「考えすぎる」ことなく正答が得ら
れるのではないかと思います。
(初稿:2001/05/07)