コンデンサーの極板が受ける電気力

微小変位による静電エネルギーの変化を考察して、電気力を評価する問題はよく知られている。電源から切り離されて電荷 Q=一定 の場合と、電源をつないだままで V=一定 の場合とで異なる計算になるが、いずれも結果は同じである。電気力は電荷分布のみで決まるはずだから、初期状態の電気力に違いがあるはずがない。本来そこに電源の存在が関係する余地はないのである。V=一定 の場合には間隔を広げれば電荷が減少するので、電気力が変わっていくことは言うまでもない。


微小変位 {\it \Delta}x だけ間隔を広げると電気容量が
{\it \Delta}C = - c {\it \Delta}x
だけ変化したとする(cコンデンサーの形状によって決まる正定数)。

(1) Q=一定 のとき(電源を切り離しているとき)

{\it \Delta}U = \displaystyle\frac{Q^2}{2C} \left(\frac{1}{1 + {\it \Delta}C/C} - 1\right)\\
\simeq - \displaystyle\frac{Q^2}{2C}\cdot \frac{{\it \Delta}C}{C}\\
= \displaystyle\frac{Q^2}{2C^2}\cdot c {\it \Delta}x

となるので、電気力

F = - \displaystyle\frac{{\it \Delta}U}{{\it \Delta}x} = - \frac{Q^2}{2C^2}\cdot c = - \frac{1}{2}cV^2

を得る。ただし、V は初期電圧である。

(2) V=一定 のとき(電源をつないだままのとき)

{\it \Delta}U = \displaystyle\frac{1}{2}ΔCV^2 = - \frac{1}{2}cV^2\cdot{\it \Delta}x

しかるに、電源から

W = 2{\it \Delta}U \lt 0

の仕事をされるので、

{\it \Delta}U = - F{\it \Delta}x + W
つまり
F{\it \Delta}x = W - {\it \Delta}U = {\it \Delta}U
すなわち
F = \displaystyle\frac{{\it \Delta}U}{{\it \Delta}x} = - \frac{1}{2}cV^2

を得る。以上の議論は平行板コンデンサーであれ、球殻コンデンサーであれ等しく適用できる。

ある大学レベルの問題解説でいきなり、

F = \displaystyle\frac{{\rm d}U}{{\rm d}x}

というものに出会った。私はすぐに、「あぁ、電源の仕事を忘れてつじつまを合わせている」と思ったものだ。しかし、後日早計であったのは自分であったことに気づいて恥ずかしい思いをした。

Q=一定 の場合、F = -\displaystyle\frac{{\rm d}U}{{\rm d}x}
V=一定 の場合、F = \displaystyle\frac{{\rm d}U}{{\rm d}x}

というのが法則として認められたものであったのである。

【参考文献】詳解電磁気学演習 P.85