電源をはさんだ電気量保存は成立しない?

今年の早稲田の入試問題だそうだ。
起電力 V の直流電源をつないだまま、平行板コンデンサーA-Bの中央に1/3の厚さの導体板Cを挿入し、その上で導体板に電荷 Q を与えたとき、極板Aの電気量はどれだけになるか、という問題。知恵袋に同じ内容で2件の質問が投稿された。


導体板挿入前の電気容量は
C = \varepsilon_0\displaystyle\frac{S}{d}

でA-C、C-Bでそれぞれ容量 3C の直列コンデンサーを構成する。最終電圧をそれぞれ V_1, V_2 とすると、
電気量保存
3C(V_2 - V_1) = Q
電圧関係
V_1 + V_2 = V
連立して、Aの電荷
3CV₁ = \displaystyle\frac{3}{2}CV - \frac{Q}{2}
を得る。

質問は、電源をはさむ電気量は 0 に保存されず、A,B 合計で  -Q となるが矛盾するのではないか、というもの。さすがに優秀な受験生がもつ疑問ともいえる。

電源は、電子を「作り出している」わけではないのだから、電源をはさんでも電気量は保存されなければならない、というわけである。当然の疑問だ。

しかし、実際どうなるかと言えば、電荷 Q がとてつもなく大きいものでなければ、上でやった計算の通りになるだろう。それならば、A,Bの電荷 -Q はいったいどこからきたのか? 電源が +Q という絶対量の電荷を持ったことになる。

この混乱を避けるためには、電源を接地しなければならなかったと思う(実際の問題で接地がないかどうかは未確認)。接地こそは理論上無限の電荷供給源、電荷吸収源である。-Q は接地から供給されたと考えればよい。現実には電源は一般に多少の電荷の絶対量の出入りは許容され、とにもかくにも電位差 V を回路に対して強制するものだと考えられる。しかし、優秀な受験生ほど悩むような紛れはなるべく避けるべきだろう。