力をなぜみつけるのか?

 力学の第一歩において、「力をみつける」練習をする。初学者にとっては力学の最初の壁と言える。いろんなかんちがいが力の発見にともない、必要数の力がなかなかみつけられない。

 その理由の一つは、目的が意識されていないことにあると思う。なぜ力をみつけるのかという目的があいまいなままに、見つけること自体が自己目的化してしまうと、不要な力が見えてしまったり、必要な力を見落としてしまったりしがちだ。

 ずばり、力をなぜみつけるのか? その目的は着目物体の未来予測にある。物体の状態や運動が、受ける力に支配されることでその未来が決まるのだ。このことをしっかり意識できれば、力をみつける作業はそれほど難しいことではなくなると思う。着目している物体の今後を考えたいのだ。

 たとえば、糸でつられたおもりが受ける力をみつけるとする。目的はおもりの未来である。そのとき、目的を意識しないと天井が糸から引かれる張力をみつけてしまったりする。その張力は天井が受けるのだから天井の未来を考えるなら必要だが、おもりの未来を考える上では何の関係もない力なのだ。おもりが受ける力は2つ。地球から引かれる重力と、糸から引かれる張力である。この2つがつりあっていれば、おもりは静止を続けるという未来が予測される。

 みつけるべき力は、着目物体=主人公が「受ける」力である。したがって、力はつねに「受ける」と表現したい。主体を入れ替えた「およぼす」といった表現を避けることで、その目的ははっきり意識されるだろう。

 りんごの未来を考えるとき、みかんが受ける力を見てはいけないのだ。