実験編
ニュートンのゆりかご、バランスボールなどの商品名でも販売されている。連続衝突する鋼球の実験と『Phun(現Algodoo)』によるシミュレーション。
2個ぶつけると2個飛び出す。
2個をテンションを加えて連結した場合。
写真では鋼球5個,シミュレーションは6個になっていることに注意。
いずれも運動量保存の法則はもちろん成り立っている。
『Phun』のシミュレーション
http://www14.atwiki.jp/yokkun?cmd=upload&act=open&pageid=89&file=BalanceBalls.phz
理論編
2個をぶつけて2個飛び出す場合と,2個を連結してぶつけてバラバラに飛び出す場合のそれぞれについて考えてみる。
この問題は10年近く前に考察したことがあった。手近なものとしては10円玉をおはじきとして使っても実験できるのでやってみるとよい。連結はテープでよいが,ちょっとテンションをかけ気味にしてしっかり連結すると,よい結果が得られる。
鋼球(またはコイン)1個の質量を とし,衝突は完全弾性衝突であるものとしよう。また,鋼球(コイン)に左から1・2・3・4・5と番号をつけて区別し,それぞれの速度の添字にも用いることとする。
(1) 連結しない場合
1と2の衝突直前の速度を , の衝突直後の速度を とする。
衝突時に鋼球(コイン)中を弾性波が伝わるには有限の時間を要するから,時間差で次々と起こる連続衝突現象として考察しなければならない。
2が3に衝突 → 3が4に衝突 → 4が5に衝突 → 5が速度 で飛び出す。
1が2に衝突 → 2が3に衝突 → 3が4に衝突 → 4が速度 で飛び出す。
いずれの衝突の場合も衝突した側が停止し,された側が速度 で飛び出す。完全弾性の等質量の正面衝突では,両者の速度が完全に交換する。もちろん,以上の過程で常に運動量保存が成立して,最初と最後の比較は
である。4の速度にプライムをつけたのは,2度目の衝突後の速度だからである。
(2) 連結した場合
連結した場合は,なかなか大変だ。1と2は質量 に一体化したとみなさなければならない。その初速度を とする。
12と3の衝突後の速度を とすると,完全弾性衝突および運動量保存により,
運動量保存は両辺を質量 で割った。両式から,
となる。続いて,
3が4に衝突 → 4が5に衝突 → 5が速度 で飛び出す。
12と3の2度目の衝突が起こる。その直後の速度を とする。ここで,
とおけば,上の2式の速度すべてにプライムをつけた式が成立する。したがって,結果は
となる。続いて,
3が4に衝突 → 4が速度 で飛び出す。
12と3の3度目の衝突が起こる。その直後の速度を
とすると,全く同様にして
となり,3は速度 で飛び出す。
各鋼球(コイン)の最終速度は,
となり,もちろん運動量保存
が成立している。
衝突される側の個数が 個の一般の場合は,
となるべきことは容易にわかる。
(初稿:2009/04/02)