安定を無視したつりあい問題

安定を無視し,単に力のつりあい条件のみで「静止」を語る悪問が後を絶たない。現実にありえない状態を問題にするのはいかがなものか?

【問題】3つの点電荷 q_1,q_2,q_3 が一直線上に等間隔に並んで静止している。q_2 = +1 [C] としてq_1,q_3 を求めよ。

【解答】
q_2 が受ける力のつりあいから,

q_1q_2 - q_2q_3 = 0\qquad\therefore q_1 = q_3

これは対称性からも明らかである。q_3 が受ける力のつりあいから,

q_2q_3 + \displaystyle\frac{1}{4}q_1q_3 = 0\qquad\therefore q_1 = q_3 = -4q_2 = -4 [C]

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アーンショーの定理から,静電気力のみによって点電荷が安定してつりあいを保つことはできない。明らかに上のような点電荷の配置は,不安定である。つまり,つり合い位置からのわずかな変位によって,系のつりあいは自ら崩壊するのである。上のつり合い配置において,系のポテンシャルエネルギーは極大となる。


q_1,q_3 を間隔1に固定したとき,q_2q_1,q_3 を結ぶ線分上を動くときの位置エネルギーの変化

(初稿:2010/10/01)