コイルを含む直流回路のつなぎかえ問題について、なぜコイルはつなぎかえ直前の電流をつなぎかえ後も保持するのか、という質問への回答。
つなぎかえる前に電流が流れていて、コイルには磁場のエネルギーがたくわえられていました。すでに磁場はできていたのです。
誘導起電力はコイルを貫く磁束の時間変化率そのものです。
磁束は電流に比例します。したがって、
となります。
コイルの場合、電流は急には変えられず、つなぎかえる前の電流を保持します。
電流 を速度 に置き換えます。
インダクタンス を質量 に置き換えます。
すると、 は力 に相当することになります。
これは運動方程式にほかなりません。つまり、誘導起電力の方程式はコイルに対する「運動方程式」なのです。
物体の運動において、力と加速度は不連続に変えられますが、速度 は不連続には変えることができません。それまで で動いていた物体が、突然異なる速度 になることはあり得ません。それは物体が質量 で表される「慣性」をもつからです。力 が変わったとしてもその点は絶対なのです。
同じように、 がコイルを流れる電流である場合、コイルは という慣性をもつために、 は不連続に変化することはできません。条件が変わっても、コイルを流れる電流は変わる前に流れていた電流を初期値として変化することになるのです。
物体の速度が不連続に変わることがないのは、物体の運動エネルギーが変わるには有限の「仕事」が必要であり、仕事には必ず時間がかかるからです。
同じようにコイルを流れる電流が不連続に変わることがないのは、コイルの磁場のエネルギーが変わるには有限の「仕事」が必要であり、仕事には必ず時間がかかるからです。この場合「仕事」とは、誘導起電力によって流れ続ける電流による仕事であり、その結果は抵抗に生じるジュール熱となって終わります。