円板の衝突転がり

粗い水平面上に鉛直に静止した質量 M、半径 r の円板に、質量 m の質点が自由落下して速さ v_0 で弾性衝突する。このとき衝突点は水平方向から中心角 \theta の位置とし、円板と質点の間には摩擦はないものとする。衝突後円板は水平面を滑ることなく転がるとするとき、その速さを求める。

これは、
斜面台への落下(力学的エネルギーは保存されるか?) - 科学のおもちゃ箱@Hatena

を思い出して、同様の考察を要する応用問題にならないかと考えた自作問題である。
剛体の回転を含む大学レベルと考えてつくってはみたが、運動量保存とエネルギー保存または反発係数1を連立するもAlgodooのシミュレーションになかなか一致しない。
そこで、上の東北大学の問題に習って運動量‐力積関係にもどって考えたらようやくわかった。円板は滑らずに転がるのだから、衝突時に円板が水平面から受ける撃力には摩擦力が含まれる。これは、円板と質点の系に対して外力であるから、水平方向の運動量は保存しないのだ。また、衝突方向の反発係数1も成立しない。


以下、紛らわしいかもしれないが文字はすべて「大きさ」とする。衝突後の質点の速度成分 v_y はシミュレーション設定に合わせて下向きにとっている。

質点と円板の間の衝突時の撃力の力積の大きさを P_1、そのとき円板が水平面から受ける撃力の力積の大きさを P_2、その成分の大きさを P_{2x}, P_{2y} とする。

運動量‐力積関係により
mv_x = P_1 \cos\theta
mv_y - mv₀ = - P₁ \sin\theta

MV = P_1\cos\theta - P_{2x}
0 = P_1\sin\theta - P_{2y}

角運動量角力積関係により
\displaystyle\frac{1}{2}MrV = P_{2x}r

エネルギー保存により
\displaystyle\frac{1}{2}m({v_x}^2+{v_y}^2) + \frac{3}{4}MV^2 = \frac{1}{2}m{v_0}^2

以上を連立させて
V = \displaystyle\frac{2mv_0\sin{2\theta}}{3M+2m\cos^2\theta}
v_x = \displaystyle\frac{3MV}{2m}
v_y = v_0 - \displaystyle\frac{3MV\tan\theta}{2m}
を得る。

Algodooシミュレーションは、ほぼ忠実にこれを再現しており、東北大学2020問題の誤った解説動画のようなエネルギー損失は見られない。P_1P_2 は同時に作用し、運動エネルギー保存を保証するように調節し合うのである。運動エネルギーが保存されつつ、反発係数が1にならないという面白いケースになっている。

※半透明の方は、円板が水平面上に固定されている場合をシミュレートしている。

Algodooシーンのダウンロード
https://img.atwiki.jp/yokkun/attach/1/1528/enban-no-shoutotsu-korogari.phz