質点のついた円板の斜面転がり

質量 M、半径 r の一様な円板があり、その中心から d の位置に質量 m の質点がくっついている。この円板が傾角 \alpha の斜面上で滑ることなく転がる運動を考察する。質点位置が円板中心と接地点中心をつなぐ半径上にあるとき(図の右側)に、放すとする。

ラグランジアンは次のようになる。

L = \displaystyle\frac{1}{2}M(r{\dot{\theta}})^2+\frac{1}{2}I{\dot{\theta}}^2+\frac{1}{2}m\{(r\dot{\theta}-d\dot{\theta}\cos\theta)^2+(d\dot{\theta}\sin\theta)^2\}+Mgr\theta\sin\alpha+mg(r\theta\sin\alpha+d\cos(\theta+\alpha)\}\\
= \displaystyle\frac{3}{4}Mr^2{\dot{\theta}}^2 + \frac{1}{2}m\{(r - d\cos\theta)^2+d^2\sin^2\theta\}{\dot{\theta}}^2+(M+m)gr\sin\alpha+mgd\cos(\theta+\alpha)

微分すると
\displaystyle\frac{\partial L}{\partial \dot{\theta}} = {\Large [} \frac{3}{2}Mr^2 + m\{(r-d\cos\theta)^2+d^2\sin^2\theta\}{\Large ]}\dot{\theta}
\displaystyle\frac{\partial L}{\partial \theta} = m{\dot{\theta}}^2\{(r-d\cos\theta)d\sin\theta+d^2\sin^2\theta\}+(M+m)gr\sin\alpha-mgd\sin(\theta+\alpha)

運動方程式は、数値積分しやすい形にすれば
\ddot{\theta} = \displaystyle\frac{-mrd\sin\theta\cdot{\dot{\theta}}^2 + (M+m)gr\sin\alpha - mgd\sin(\theta+\alpha)}{\displaystyle\frac{3}{2}Mr^2+m\{(r-d\cos\theta)^2+d^2\sin^2\theta\}}
となる。

m=M/5 の場合の数値積分とシミュレーションは次のようになった。

質点の質量 m が大きくなっていくと、いずれ円板がそのまま斜面を転がり降りずに振動に移行する。その境界に興味をもった。

ポテンシャルエネルギーの基準を考察の簡明さのために初期位置に移す。
U(\theta) = -(M+m)gr\theta\sin\alpha+mgd\{\cos\alpha - \cos(\theta+\alpha)\}

初期状態と同じく U(\theta)=0 となるような \theta が存在すれば振動となる。その条件を整理すると、
\displaystyle\frac{(M+m)r\sin\alpha}{md} < \displaystyle\frac{\cos\alpha - \cos(\theta - \alpha)}{\theta}
を得る。

右辺は質量に無関係に決まるので、その最大値が振動に移行するか否かの m の境界値を決めることになる。右辺を微分して=0としても簡単に解ける方程式とはならないので、ここは数値計算で求めることにした。下図(PTC Mathcad による)がその概要である。m の境界値を適用した場合、右辺が最大値をとる \theta においてポテンシャルエネルギーが0の最大値をとることが確認できた。

以下は質点の質量が境界値付近の場合のPolymathによる数値積分結果と、Algodooによるシミュレーションの様子である。運動の様子はよく一致しているが、境界値付近ではわずかな誤差で周期が大きく変わるので、周期はややずれているようだ。

Polymath による質点質量の境界値付近での振動の数値積分
Algodooによるシミュレーション

Algodooシーンのダウンロード
https://img.atwiki.jp/yokkun/attach/1/1527/shitsuten-no-tsuita-entou-no-shamen-korogari-shindou.phz