降り注ぐ粒子群の中の物体

早大'09入試問題より。降り注ぐ粒子群から力積を受ける物体の運動。分子運動論に類似の難問。

【問題】

図のように,なめらかな水平面上に面積 S,傾角 \theta の斜面をもつ,質量 M の斜面台があり,右向きに速さ V で動いている。一方,質量 m\; (m \ll M) の粒子が単位体積当たり n 個の数密度で一様に分布しており,一定の速さ v で鉛直下方に降り注いで台に弾性衝突をする。以下重力や摩擦の影響は無視でき,一度台や水平面に衝突した粒子は,その後の台の運動に影響を与えないものとする。また,粒子どうしの衝突は考慮しなくてよい。

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(1) 斜面および前面に衝突する粒子1個から受ける力積の水平成分の大きさを,それぞれ求めよ。
(2) 斜面および前面に時間 {\it \Delta}t の間に衝突する粒子数を,それぞれ求めよ。
(3) 十分に時間がたつと,台は右方向に等速度運動するようになる。この速さを求めよ。

Algodoo シーンのダウンロード>
http://www14.atwiki.jp/yokkun?cmd=upload&act=open&pageid=242&file=Waseda09.phz

【解答】降り注ぐ粒子群の中の物体

(1)

m \ll M により,1個の粒子が1回衝突することによる台の速度変化は, V に対して m/M の程度であるから無視できるものとして,台から見た粒子の速度変化を考えると図のようになる。

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したがって,斜面および前面への粒子衝突によって,台が受ける力積の水平成分は,

P_1 = 2m(v\cos\theta - V\sin\theta)\sin\theta

P_2 = 2mV

となる。

(2)

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斜面および前面に {\it\Delta}t の間に衝突するのは,図の平行四辺形を断面とする領域にある粒子であるから,その個数はそれぞれ

N_1 = nS(v\cos\theta - V\sin\theta){\it\Delta}t

N_2 = nS\sin\theta\cdot V{\it\Delta}t

となる。

(3)

斜面および前面が {\it\Delta}t の間に受ける力積は,

N_1 P_1 = 2mnS(v\cos\theta - V\sin\theta)^2\sin\theta\cdot{\it\Delta}t

N_2 P_2 = 2mnS\sin\theta\cdot V^2{\it\Delta}t

したがって,斜面および前面が受ける平均の力は,

F_1 = 2mnS(v\cos\theta - V\sin\theta)^2\sin\theta

F_2 = 2mnS\sin\theta\cdot V^2

終端速度は,F_1 = F_2 によって与えられるから,

v\cos\theta - V\sin\theta = V \qquad \therefore V = \displaystyle\frac{\cos\theta}{1+\sin\theta}\;v

を得る。

※ Algodoo での設定は,M=700[kg], m=1.6[kg],v = 20[m/s]},V = 11.5[m/s],\theta = \pi/6 である。シミュレーション結果は良好で,力学シミュレータとしての Algodoo の実力を発揮する一題となった。

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(初稿:2009/12/07)