小球を投げ出して走る台車

オリジナル問題。通常は相対速度を一定とする設定が普通だが,そうでない場合の発展的な問題。小球を落下によって水平に投げ出して加速する台車。

【問題】

総質量 M_0 の台車が,高さ h のタンクから1秒に1個ずつ落下してレールをすべりおりた質量 m の小球を水平後方に投げ出して初速ゼロから加速していく。重力加速度の大きさを g とし,車輪の質量および摩擦や抵抗は無視できるものとする。また,小球の投げ出しが終わるまで次の小球は落下しない。

f:id:yokkun831:20210315092043j:plain

(1) 台車が小球を投げ出す相対速さ v_0 が一定であるものとして,台車の質量が M のときから1個投げ出して M-m になったときの台車の速さの変化 {\it\Delta}V を求めよ。

(2) 厳密には,(1)は正しくない。v_0 が一定であることは前提とせずに,同様に質量 M から M-m になったときの台車の速さの変化 {\it\Delta}V を求めよ。

※ Algodooの設定は,M_0=10[kg],m=0.10[kg],h=2.0[m] である。

Algodoo シーンのダウンロード
https://www14.atwiki.jp/yokkun?cmd=upload&act=open&pageid=254&file=GP-car.phz

【解答】小球を投げ出して走る台車

(1)

小球が落ちる前の台車の速さを V とすると,運動量保存により

MV = (M-m)(V+{\it\Delta}V) + m(V-v_0)\qquad \therefore {\it\Delta}V = \displaystyle\frac{m}{M-m}\;v_0

(2)

小球が投げ出される速さを v,そのときの台車の速さを V^\prime として,運動量保存により

MV = (M-m)V^\prime - mv

また,エネルギー保存により

\displaystyle\frac{1}{2}MV^2 + mgh = \frac{1}{2}(M-m){V^\prime}^2 + \frac{1}{2}mv^2

両式から v を消去して整理すると,

{V^\prime}^2 - 2VV^\prime + V^2 - \displaystyle\frac{2m^2gh}{M(M-m)} = 0

\therefore {\it\Delta}V = V^\prime - V = \sqrt{\displaystyle\frac{2m^2gh}{M(M-m)}}

を得る。

(2)の結果において,m \ll M および,v_0 \simeq \sqrt{2gh} を考慮すると,(1)の結果に一致する。

ちなみに,t 秒後の台車の速さは,(1) の場合

V(t) = \sum_{k=1}^t\left(\displaystyle\frac{m}{M_0-km}\;v_0\right)

また,m \ll M を考慮し,m をガスの一様な噴出とするとき,(1)は

dV = \displaystyle\frac{-dM}{M}v_0\qquad \therefore V(t) = v_0 \ln\frac{M_0}{M(t)}

となって,「ツィオルコフスキーのロケット方程式」に一致する。

(2)の場合 t 秒後の速さは,

V(t) = \sum_{k=1}^t\sqrt{\displaystyle\frac{2m^2gh}{(M_0-km+m)(M_0-km)}}

となる。上の3つの V(t) は,m \ll M の近似において一致し,下図のような変化となる。

f:id:yokkun831:20210315093102j:plain
f:id:yokkun831:20210315093117j:plain

youtu.be

(初稿:2009/12/15)