ターンテーブル上を歩く虫 - 科学のおもちゃ箱@Hatena

「一般力学30講」（戸田）より。上で虫が円を描いて歩くときのターンテーブルの回転。

【問題】（大学レベル）

半径 $R$ ，質量 $M$ の一様な円盤が，鉛直軸のまわりに自由に回転できるようになっている。質量 $m$ の虫が軸を出発し，円盤に対して一定の速さ $v$ で直径 $R$ の円を描いて歩くとする。

f:id:yokkun831:20210317175257j:plain

(1) 円盤上で見た虫の位置が，軌道円の中心角 $\theta$ にある瞬間，外から見た円盤の角速度の絶対値を求めよ。

(2) 虫が軌道上を一周したとき，円盤の回転角はどれだけになっているか。ただし，次の積分公式を用いてよい。

$\displaystyle\int_0^{\pi/2}\frac{dx}{k^2+\sin^2x} = \int_0^{\pi/2}\frac{dx}{k^2+\cos^2x} = \frac{\pi/2}{k\sqrt{k^2+1}}$

※　Algodoonの設定は， $R=1.0$ m , $M=5.0$ kg , $m=1.0$ kg , $v=\pi/20$ m/s である。

Algodoo シーンのダウンロード
https://www14.atwiki.jp/yokkun?cmd=upload&act=open&pageid=292&file=Bug-on-Disk.phz

【解答】

(1)

円盤上で見た虫の速さは，

$v = \displaystyle\frac{R}{2}\;\dot{\theta}$

である。また，円盤の角速度を $-\dot{\phi}$ とおくと，外から見た虫の角運動量は

$L = mr\left(v\sin\displaystyle\frac{\theta}{2} - r\dot{\phi}\right) = mR\sin\displaystyle\frac{\theta}{2}\left(\displaystyle\frac{R}{2}\;\dot{\theta}\sin\frac{\theta}{2} - R\sin\frac{\theta}{2}\cdot\dot{\phi}\right) = mR^2\sin^2\displaystyle\frac{\theta}{2}\left(\frac{1}{2}\dot\theta - \dot\phi\right)$

角運動量保存により，

$L = I\dot\phi$

ここに， $I$ は円盤の慣性モーメント

$I = \displaystyle\frac{1}{2}MR^2$

である。

$\dot\phi$ について解くと，

$\dot\phi = \displaystyle\frac{\sin^2(\theta/2)}{I/(mR^2)+\sin^2(\theta/2)}\;\frac{\dot\theta}{2} = \frac{\sin^2(\theta/2)}{M/(2m)+\sin^2(\theta/2)}\;\frac{v}{R}$

を得る。

(2)

$\alpha = \theta/2$ とおいて，

$d\phi = \displaystyle\frac{\sin^2\alpha}{I/(mR^2)+\sin^2\alpha}\;d\alpha = \left(1 - \frac{I/(mR^2)}{I/(mR^2)+\sin^2\alpha}\right)\;d\alpha$

これを積分すると，

$\phi = \int_0^\pi\left(1 - \displaystyle\frac{I/(mR^2)}{I/(mR^2)+\sin^2\alpha}\right)\;d\alpha = \pi\left(1-\sqrt{\displaystyle\frac{I}{I+mR^2}}\right) = \pi\left(1-\sqrt{\displaystyle\frac{M}{M+2m}}\right)$

を得る。

f:id:yokkun831:20210317180124j:plain f:id:yokkun831:20210317180139j:plain

（初稿：2009/12/31）