連星系の崩壊2

連星系の崩壊 - 科学のおもちゃ箱@Hatena
は、連星の公転が突然停止するという突飛なものであったが、こちらは多少は現実味のある設定。やや難問だと思うが、結果はいたってシンプル。
【問題】
質量がそれぞれ M_A, M_B\;(M_B\gt M_A) の星A, B が図のように連星系を構成し、重心Oから r_A, r_B の距離で速さ v_A, v_B で円軌道を描いて公転していた。その後、星Bが爆発を起こしてガスの一部を失い、質量が M_B^\prime に減少した。ただし、爆発は瞬時に起こり、ガスは星Bから見て球対称的に放出され、ガスによる運動への直接の影響はないものとする。爆発後A,Bが無限遠に離れるような限界の M_B^\primeM_A,M_B を用いて表せ。

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※元の問題では小問設定による多少の誘導があり、その最終問題がこれである。先行する小問はいずれも易しいため誘導は十分でなく、いきなりの難問となっている。

【解答】
準備として、爆発前の運動状態を調べる。

運動エネルギー
T = \displaystyle\frac{1}{2}\mu u^2
ただし、
\mu = \displaystyle\frac{M_A M_B}{M_A+M_B}:換算質量
u = v_A+v_B:相対速度

ポテンシャルエネルギー
U = -\displaystyle\frac{GM_AM_B}{r}
ただし、
r = r_A+r_B

公転中心Oは重心だから、
M_A r_A = M_B r_B
M_A v_A = M_B v_B

円軌道だから円運動の方程式より
\displaystyle\frac{M_A {v_A}^2}{r_A} = \frac{GM_A M_B}{r^2} = \frac{M_B {v_B}^2}{r_B}
が成立する。すぐ上の関係を適用すれば
T = \displaystyle\frac{GM_AM_B}{2r} = -\frac{1}{2}U
が成立する。

爆発後重心は速度
V^\prime = \displaystyle\frac{M_Av_A - M_B^\prime v_B}{M_A+M_B^\prime}
をもって運動する。

爆発直後について重心系で考察する。
運動エネルギー
T^\prime = \displaystyle\frac{1}{2}\mu^\prime u^2 = \frac{\mu^\prime}{\mu} T
ただし、
\mu^\prime = \displaystyle\frac{M_A M_B^\prime}{M_A+M_B^\prime}:換算質量
ポテンシャルエネルギー
U^\prime = -\displaystyle\frac{GM_AM_B^\prime}{r} = \frac{M_B^\prime}{M_B} U

求める条件は
T^\prime + U^\prime = 0
であるから、
\displaystyle\frac{\mu^\prime M_B}{\mu M_B^\prime} = 2
M_B^\prime について解けば、
M_B^\prime = \displaystyle\frac{M_B - M_A}{2}
を得る。

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※Algodooシミュレーションでは、計算誤差のためか長く追跡するとまた近づくという、やや不満が残る結果であった。