重心運動と相対運動の分離

相対運動と換算質量 - 科学のおもちゃ箱@Hatena
において、重心運動と相対運動への分離の一般論をまとめたが、初歩的な例を考察する。

質量 M,m の2質点をばね定数 k のばねの両端につなぎ、質量 m の質点をつまんで、質量 M の質点を下にして鉛直にぶらさげてつりあい静止させたのちにぱっと放して落下させたときの運動を考える。

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運動は、重心の自由落下と重心周りの相対運動に完全に分離できる。

M,m の位置を X,x、加速度を A,a、ばねの自然長を l とすると、運動方程式
MA = Mg - k(X - x - l) \\ ma = mg + k(X - x - l)

辺々加えると、
MA+ma = (M+m)g
すなわち
(M+m)\displaystyle\frac{MA+ma}{M+m} = (M+m)g
ここに
a_G = \displaystyle\frac{MA+ma}{M+m}
は重心の加速度に他ならないから、これはいわゆる重心の運動方程式である。内部でどんな(相対)運動が起こっていようと無関係に全体は重力によって自由落下する。

一方、
A = g - \displaystyle\frac{k}{M}(X - x - l) \\ a = g + \displaystyle\frac{k}{m}(X - x - l)
として辺々引くと、
A - a = -\left(\displaystyle\frac{1}{M}+\frac{1}{m}\right)k(X - x - l)
すなわち
\mu(A - a) = - k(X - x - l)
ただし、
\mu = \displaystyle\frac{Mm}{M+m}
はいわゆる換算質量である。
これが相対運動の方程式であり、落下とは無関係に2質点は重心周りに単振動をすることがわかる。その角振動数は、
\omega = \sqrt{\displaystyle\frac{k}{\mu}}
となる。