連星系を記述する3つの運動方程式

質量 m_1, m_2 をもつ連星系を考える。
簡単のため、相互の距離 r=r_1+r_2 が変わらない円軌道としよう。以下の考察を一般の楕円軌道に応用することはさほど難しくないだろう。

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円板の衝突転がり

粗い水平面上に鉛直に静止した質量 M、半径 r の円板に、質量 m の質点が自由落下して速さ v_0 で弾性衝突する。このとき衝突点は水平方向から中心角 \theta の位置とし、円板と質点の間には摩擦はないものとする。衝突後円板は水平面を滑ることなく転がるとするとき、その速さを求める。

これは、
斜面台への落下(力学的エネルギーは保存されるか?) - 科学のおもちゃ箱@Hatena

を思い出して、同様の考察を要する応用問題にならないかと考えた自作問題である。
剛体の回転を含む大学レベルと考えてつくってはみたが、運動量保存とエネルギー保存または反発係数1を連立するもAlgodooのシミュレーションになかなか一致しない。
そこで、上の東北大学の問題に習って運動量‐力積関係にもどって考えたらようやくわかった。円板は滑らずに転がるのだから、衝突時に円板が水平面から受ける撃力には摩擦力が含まれる。これは、円板と質点の系に対して外力であるから、水平方向の運動量は保存しないのだ。また、衝突方向の反発係数1も成立しない。

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質点のついた円板の斜面転がり

質量 M、半径 r の一様な円板があり、その中心から d の位置に質量 m の質点がくっついている。この円板が傾角 \alpha の斜面上で滑ることなく転がる運動を考察する。質点位置が円板中心と接地点中心をつなぐ半径上にあるとき(図の右側)に、放すとする。

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位置ベクトルの1軸回転

最近、固定座標軸2軸まわりの回転による位置ベクトルの移動を考察した。
位置ベクトルの2軸回転 - 科学のおもちゃ箱@Hatena

与えられた位置ベクトルを任意の位置に回転させるには、回転軸を任意に取れるならば本来1軸まわりの回転ですむ。回転軸は元ベクトル \boldsymbol{r} と先ベクトル \boldsymbol{R} の両方に垂直だから、両者のベクトル積方向となるだろう。

\boldsymbol{e}_\perp = \displaystyle\frac{\boldsymbol{r}\times\boldsymbol{R}}{|\boldsymbol{r}\times\boldsymbol{R}|}

方向だけ取り出して単位ベクトルとした。回転角は、

\psi = \sin^{-1}\displaystyle\frac{|\boldsymbol{r}\times\boldsymbol{R}|}{r^2}

となるが、電卓や数学ソフトでは \sin^{-1} の値域は -\pi/2~\pi/2 だから、拡張のために次のようにする。

\psi = (\boldsymbol{r}\cdot\boldsymbol{R} \ge 0)\cdot \sin^{-1}\displaystyle\frac{|\boldsymbol{r}\times\boldsymbol{R}|}{r^2} + (\boldsymbol{r}\cdot\boldsymbol{R} \lt 0)\cdot \left(\pi - \sin^{-1}\displaystyle\frac{|\boldsymbol{r}\times\boldsymbol{R}|}{r^2}\right)

不等号のあるのは論理式である。

以上で1軸回転の方法は終わりだが、これを検証するのはなかなか面倒なことになる。

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位置ベクトルの2軸回転

位置ベクトル (x,y,z)y,z の2軸まわりの回転3回で (X,Y,Z) に移すことを考える。

まず、z 成分のみのベクトル (0,0,r) を任意の位置ベクトル (x,y,z) に移す操作を見出そう。

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斜面台と小物体の相対運動

よくある相対運動の問題。
傾角 \theta の斜面をもつ質量 M の台の上で質量 m の小物体が摩擦なく滑り、それにともなって斜面台がなめらかな水平面上を運動する。

水平方向の運動量保存と、力学的エネルギー保存で多くの情報が得られるが、慣性力を考慮した運動方程式を立式して運動を記述したい。

図のように設定する。水平右向きに x 軸、鉛直上方に y 軸をとり、小物体の台に対する相対加速度 (\alpha_x, \alpha_y)、台の外から見た加速度を A<0 とする。

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弾性衝突後の角度関係

質点Aが等質量の静止した質点Bに弾性衝突したとき、衝突後の散乱方向が直交することはよく知られている。A,Bの質量が異なり、m_1,m_2 とするとき、静止したBにAが速度 v_0 で弾性衝突したときのA,Bの散乱角 \theta_1,\theta_2 の関係を求めたい。

運動量保存とエネルギー保存を連立させるわけだが、衝突方向はBの散乱方向とわかっているから、反発係数1が簡明だろう。

m_1v_1\cos\theta_1 + m_2v_2\cos\theta_2 = m_1v_0

m_1v_1\sin\theta_1 + m_2v_2\sin\theta_2 = 0

v\cos\theta_2 = v_2 - v_1\cos(\theta_2 - \theta_1)

\theta_1,\theta_2 は同じ向きに定義していることに注意。

第2式より

v_2 = - \displaystyle\frac{m_1\sin\theta_1}{m_2\sin\theta_2} v_1

第1式に代入して

v_1 = \displaystyle\frac{\sin\theta_2}{\sin(\theta_2 - \theta_1)} v

v_2 = - \displaystyle\frac{m_1\sin\theta_1}{m_2\sin(\theta_2 - \theta_1)} v

第3式に適用すると、

\displaystyle\frac{\sin(\theta_1 - 2\theta_2)}{\sin\theta_1} = \frac{m_1}{m_2}

という関係を得る。

もちろん、上の v_1,v_2 をエネルギー保存に適用しても、計算がやや複雑にはなるものの、さほどの労もなく同じ結果に至る。


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