ビリヤード球のすべりところがり

以前、一般的な球体のすべりところがりについて考察した。
水平面上の球体のすべりと転がり - 科学のおもちゃ箱@Hatena
この考察は、理想化した玉突き(ビリヤード)の球の運動にそのまま応用される。

【問題】

質量 M、半径 a のビリヤード球を粗い水平面に静止させ、その中心から上向きに h の点に撃力(の力積) P を水平に加える。その後の重心運動および、重心まわりの回転運動を考察せよ。ただし、球と水平面との間の動摩擦係数を \mu とする。
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【解答】

撃力を受ける間の摩擦力の影響は無視する。
撃力によって生じる重心の初速度を v_0 とすると、運動量‐力積関係により
Mv_0 = P
角速度の初期値を転がる向きを正として \omega_0 とおくと、角運動量-角力積関係により
I\omega_0 = Ph
ただし、
I = \displaystyle\frac{2}{5}Ma^2

連立により
v_0 = \displaystyle\frac{2a}{5h}a\omega_0
を得る。

(i) h \gt \displaystyle\frac{2}{5}a のとき

v_0 \lt a\omega_0 だから、摩擦力は進行方向である。
重心の運動方程式
M\ddot{x} = \mu Mg → v = v_0+\mu gt
重心まわりの回転の運動方程式
I\dot{\omega} = -\mu Mga → \omega = \omega_0 - \displaystyle\frac{5\mu g}{2a} t
すべりがなくなり、ころがりに移行する時刻 t_1 として、
v_0+\mu gt_1 = a\left(\omega_0 - \displaystyle\frac{5\mu g}{2a} t_1\right)
したがって、
t_1 = \displaystyle\frac{2(a\omega_0 - v_0)}{7\mu g}
を境にころがりに移行し、最終速度は
v_t = \displaystyle\frac{5}{7}v_0+\frac{2}{7}a\omega_0
となる。

(ii) h = \displaystyle\frac{2}{5}a のとき

撃力を受けた直後から、球はすべらずに転がる。