非弾性衝突による運動エネルギーの損失

2物体の非弾性正面衝突において、運動量保存
m_1v_1 + m_2v_2 = m_1{v_1}^\prime + m_2{v_2}^\prime
および、反発係数の関係
e(v_1 - v_2) = {v_2}^\prime - {v_1}^\prime
を連立させる問題はよく見られる。

e=1 すなわち弾性衝突において運動エネルギーが保存されることはいうまでもないが、非弾性衝突における運動エネルギーの損失分を直接計算して、因子 1-e^2 をひねり出すのは相当やっかいである。つまり、
{\it\Delta}E = \displaystyle\frac{1}{2}m_1{v_1}^2 + \frac{1}{2}m_2{v_2}^2 - \left(\frac{1}{2}m_1{{v_1}^\prime}^2 + \frac{1}{2}m_2{{v_2}^\prime}^2\right)
を求める計算である。直接上の2つの関係だけをもとに計算しようとすると、たちまち泥沼にはまる。

系の運動エネルギーは、重心の運動エネルギーと相対運動のエネルギーとに分解できる。
E = \displaystyle\frac{1}{2}m_1{v_1}^2 + \frac{1}{2}m_2{v_2}^2 = \displaystyle\frac{1}{2}M{V_{\rm G}}^2+ \frac{1}{2}\mu (v_1 - v_2)^2
ただし、
M = m_1+m_2, \,\, V_{\rm G} = \displaystyle\frac{m_1v_1+m_2v_2}{M}, \,\, \mu = \displaystyle\frac{m_1m_2}{M}

これを用いると、運動エネルギーの損失は相対運動エネルギーの減少分にほかならないから、ただちに
{\it\Delta}E = -\displaystyle\frac{1}{2}μ(v_1 - v_2)^2(1-e^2)
を得る。