くさりの運動に潜む非弾性衝突

「知恵袋」から拾った問題。

【問題】

床の上に置かれたくさりの一端を持って、一定の速さ v で持ち上げる。時間 t 後の力を求めよ。くさりの構造を無視して、線密度 \lambda の容易に曲がるひものようなものとしてあつかってよいものとする。

さらに発展した下記と同様の問題である。
ばねにつりさげられたひも - 科学のおもちゃ箱@Hatena
くさりの落下と抗力 - 科学のおもちゃ箱@Hatena

【解答】

床を原点とし、鉛直上向きに z 軸をとる。求める力を F とすれば、くさりの運動方程式

\displaystyle\frac{d}{dt}(\lambda z v) = F - \lambda z g

左辺は、
\displaystyle\frac{d}{dt}(\lambda z v) = \lambda v^2 + \lambda z \frac{dv}{dt} = \lambda v^2
だから、
F = \lambda v^2 + \lambda g vt
を得る。

質問者は、一方でエネルギーによる解法を試みた。

微小変位 \it{\Delta} z にたいして、エネルギー原理を書くと、
\displaystyle\frac{1}{2}\lambda {\it{\Delta}} z v^2 = F\it{\Delta}z - \lambda zg \it{\Delta} z
したがって、
F = \displaystyle\frac{1}{2}\lambda v^2 + \lambda gvt

この差に悩んだのである。もちろん、この差こそが床上の静止状態から瞬時に v の速さを得るために、くさりが受ける非弾性衝突による力学的エネルギーの散逸を表すものにほかならない。