リング内を転がる衛星滑車

中心軸が連結された2円板 - 科学のおもちゃ箱@Hatena
を参考に類題を考えてみた。

【問題】

質量 M、半径 R の幅を無視できる一様リング状のレールが同一半径の質量が無視できる円形の板に固定されている。その中心に回転軸固定された質量が無視できるアームの先に質量 m、半径 r の一様円板である滑車が回転軸固定され、リングと適度の抗力をもって接触している。系全体はなめらかな水平面におかれている。全体が静止している状態から、円板に \omega_0 の角速度を与えたとき、定常状態(滑りがなくなって転がりになった状態)に落ち着いたときの円板、リング、アームの角速度 \omega_1\omega_2\Omega を求めよ。

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※角速度は反時計回りを正に定義しているが、\Omega \lt 0 であり、アームだけは図の矢印とは逆の時計回りになる。

Alogodooシーンのダウンロード
https://img.atwiki.jp/yokkun/attach/187/1502/ring-to-eisei-kassha-no-undou.phz

【解答】

角運動量保存により

\displaystyle\frac{1}{2}mr^2\omega_0 = \frac{1}{2}mr^2\omega_1 + MR^2\omega_2 + \mu(R-r)^2\Omega …①
ただし、\mu = \displaystyle\frac{Mm}{M+m}

滑らずに転がる条件により

(R - r)\Omega = R\omega_2 - r\omega_1 …②

滑りの間の作用・反作用関係により

\displaystyle\frac{\displaystyle\frac{1}{2}mr^2(\omega_0 - \omega_1)}{r} = \frac{MR^2\omega_2}{R}
すなわち
\omega_0 - \omega_1 = \displaystyle\frac{2MR}{mr} \omega_2 …③

①に③を適用して整理すると

\omega_2 = -\displaystyle\frac{\mu(R-r)}{MR} \Omega
\omega_0 - \omega_1 = -\displaystyle\frac{2\mu(R-r)}{mr} \Omega

これらを②に適用して

\Omega = -\displaystyle\frac{(M+m)(r\omega_0}{(3M+2m)(R-r)}

上の式に代入すれば、\omega_1,\,\omega_2 を得る。

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Algodooによるシミュレーション

Algodooシミュレーションでは精度確保のために巨大な系にしてある。また、Algodooでは、題意の「適当な抗力」を保持して正常な滑り・転がりを実現するというのがやや難しい。アームの長さをリングと滑車がちょうど接触する長さにすると摩擦力が生じないので、少しだけ長くしてつねに適度の抗力でリングと滑車が押し合うようにしなければならない。ところが、あまり長くするとなぜか力学的エネルギー保存に支障が生じる。転がりに移行して定常状態になったかと思えば、どんどん加速して力学的エネルギーが増加するといった動作に陥ってしまうのである。そこで、定常状態の力学的エネルギーがほぼ保存されるような位置に何とか落ち着かせた設定にしてある。